Statement

 

百合野美沙子 YURINO Misako

私は自分の心の中の光景を絵に描いています。その光景は日ごろの生活の中で、ふと浮かびあがってきます。雨の日の傘立てを見た時、寺院の門を見た時、お風呂の浴槽を見た時、ありとあらゆる時、目の前にあるものをきっかけにして、愉快で不思議な光景が私の頭の中に広がります。

目の前にあるものを見て、頭の中に光景が浮かび上がってくる現象は私の癖です。意図せず浮かび上がってくる光景は、幼少期からの経験の積み重ねによってできた記憶に影響を受けていると感じています。小さな頃から、「一般的に好まれずむしろ少し陰気なもの」「不気味さが皮膚や膜に覆われて一目見ただけでは分からないもの」「そこにストーリーがあり想像にふけることができるもの」に注視を寄せる子どもでした。例えば、廃寺、廃遊園地、風化した建築物、道端に落ちている煙草の吸殻や、捨てられたゴミ、レシート、カラスの羽。ゴミ捨て場や道路の端が好きであり、捨てられているもの、落ちているものの中に美しい造形のものがないかと意識して歩いていました。散歩好きの父に連れられ、雷が落ちて焼けた家、オウム真理教の教徒が潜伏していたという貯水槽のある塔、自殺者が出たという林、カラスの住処の森、廃墟となって大量のハエが飛ぶ戦没者慰霊碑場など様々な場所に赴きました。それら全てを自分の中に溜め込み続け、いつからか過去の記憶が目の前の事象と繋がり、愉快で不思議な光景が浮かぶようになりました。

私は小さい頃から、なぜ夢の世界はあんなに不条理なんだろうと不思議でした。眠たくて、でも寝れなくてまどろんでしまう時、なぜ脳は勝手につじつまの合わない物語を紡ぐのだろうかと不思議でした。私の描く絵は「夢」にも似ています。しかし私の描く光景は、意識がはっきりしている時に浮かんでくるので、「夢」のように無意識から湧き上がるものではありません。私はもっと無意識に迫りたいと思っています。その点で、シュルレアリスム絵画や技法の研究を進めています。

私たちは、だれもが自身の中に、果てしなく長い生物としての情報を持っています。それは、例えば20年間生きた記憶とか、昨日知った新しい英単語とかそういうものではなくて、哺乳類が生まれ、人になり、子孫を残して、今いる私までバトンしてきた情報(DNAというのかもしれない)です。それは私たちの中に蓄積されていて、普段私たちは意識していないけれど、ある瞬間だけ、ふと見たり感じたりすることができます。しかしすぐに消えてしまいます。私はそんな感覚を、景色を、画面にとどめておきたいのです。表現者という立場から、自分の無意識と向かい合い、表現したいと思っています。

絵を通して、誰の心の中にもある無意識に焦点を当てることができれば、と考えています。

 


プロフィール

1988年 東京都生まれ

2012年 大阪教育大学教養学科芸術専攻美術コース 卒業

2014年 大阪教育大学 大学院 教育学研究科 芸術文化専攻 修了

現在大阪府中学校に美術科教諭として勤務。

 

個展

2016年 「百合野美沙子展 日々うつつ」(コンテンポラリーアートギャラリーZone/大阪)

 

グループ展

2011年 「絵画7人展 七色菓子」(アートギャラリー風雅/大阪)

2011年 「your review —言葉の雨は絵画の下地—」(大阪教育大学大ホール/大阪)

2012年  「大阪教育大学教養学科芸術専攻美術コース卒業制作展」(海岸通ギャラリーCASO/大阪)

2013年 「ALL ABOUT THE GIRLS 」vol.3(artyard studio/大阪)

2015年 グループ展「PRISM」(コンテンポラリーアートギャラリーZone/大阪)

2016年 グループ展「私、他者、世界、生 ―現実を超える現実―」(コンテンポラリーアートギャラリーZone/大阪)

 

Art Works

2013年 「花柄×YURINO presents ぼくらの森」(artyard studio/大阪)

2014年 「花柄×YURINO presents ぼくらの森 第2章」(artyard studio/大阪)

その他、CDジャケットデザイン・衣装制作・アクセサリー制作など